世間では「思ったことは、ちゃんと言ったほうがいい」と言われる。
我慢は体に毒。言わなきゃ伝わらない。自分の意見は、はっきり主張しなさい。
全部、正論。あなたももう、何百回と聞かされてきたはずだ。
それでも言えないから、いまここを読んでいるんじゃないのか。
でも僕は、この正論をそのままあなたに渡したくない。——言えない人が、どれだけの夜に言葉を飲み込んできたか。その重さを、正論はひとつも知らないからだ。
嫌われるかもしれない。関係が壊れるかもしれない。空気を悪くして、居場所をなくすかもしれない。
その怖さを「考えすぎだよ」と笑う人もいる。でも僕は、笑えない。
「言えばいいじゃん」で言えるくらいなら、あなたはとっくに言えている。
言えないのには、ちゃんと理由がある。だから今日は「上手な伝え方のコツ」みたいな話はしない。その手前にある、もっと大事な順番の話を、僕の失敗もまぜながら書いていく。
言えないのは、弱さじゃなくて学習だ
思い出してみてほしい。
昔、勇気を出して口にした本音が、正面から否定された。怒られた。笑われた。
あるいは、なかったことみたいに聞き流された。
あの日から、あなたの中で「言う=危険」という式が、静かにできあがっていった。
だから黙る。合わせて笑う。波風を立てずに、その場をやり過ごす。
それは逃げでも卑怯でもない。傷つかずに生き延びるために、あなたが自力で編み出した生存戦略だった。
僕も長いあいだ、そうやって生きてきた。嫌われたくなくて、周りの目ばかり気にして、言いたいことがあるのに口を開く直前で全部飲み込んで、「全然いいよ」と笑う。
家に帰ってから、どっと疲れる。言えなかった言葉だけが、胸の奥に溜まっていく。そんな日々を、何年も続けてきた。
そしてある日、気づいてしまった。言わないことで僕が守っていたのは、相手との関係じゃない。
——「嫌われない自分」という安全圏のほうだった。
責めてるんじゃない。僕がそうだったから言っている。守りたくなるほど、あなたはこれまで傷ついてきた。ただそれだけの話で、そこに「あなたが弱い」という証拠は、ひとつもない。
本音は、ぶつける前に聴くもの
ここで、世間の常識をもうひとつ崩しておく。「本音を言える人は強くて、言えない人は弱い」。あの序列は、嘘だ。
勢いにまかせて叫ぶだけなら、正直、誰にでもできる。本当に難しいのは、叫ぶ前に、自分がいま何を感じているのかをごまかさずに見ること。そっちのほうが、よっぽど勇気がいる。だから、言えない怖さを知っているあなたは、弱いどころか、その難しい入口にもう立っている。
だから、順番を変えよう。いきなり相手に言わなくていい。誰かにぶつける必要も、まだない。
まず、自分の中で「本当は、嫌だった」「本当は、こうしてほしかった」と認める。先にやるのは、そっちだ。
本音を「取り戻す」ことと、本音を「ぶつける」ことは、まったく別の作業だ。
前者は、ひとりで安全にできる。そして前者を飛ばして後者だけやると、たいてい正面衝突の事故になる。僕はそれで、大事な関係を一つ壊しかけた。
目指す最初のゴールは、ひとつだけ。誰かに言うことじゃなく、自分が、自分の本音を知っていること。心の中でそう言えたら、それだけで十分なスタートになる。
言うか言わないか、いつ言うか、誰に言うか。それは全部、その後で選べばいい。選ぶ権利は、最初から最後まで、あなたの手の中にある。
怖さごと、書き出してみる
やることは、シンプル。夜でも、通勤の途中でもいい。一度立ち止まって、紙でもスマホのメモでもいいから、書き出してみてほしい。
うまい文章じゃなくていい。箇条書きでも、単語の羅列でもいい。誰にも見せないものに、遠慮も体裁もいらない。
何が、嫌だったのか。
本当は、どうしてほしかったのか。
どこまでなら、相手に伝えられそうか。
言ったら、何が起きそうで怖いのか。
ここまで言葉にできた本音は、もう暴発しない。不思議なくらい、自分で扱えるものに変わる。
勢いまかせのぶつけ方にならず、伝える相手も、タイミングも、言い方も、自分で選んで設計できるようになる。
本音は、感情の爆発じゃない。
自分の中でちゃんと確かめてから、必要な形で、必要な分だけ、現実に出していく。静かで、誠実な作業だ。
無理に言わせない。順番をつくる
RE:STARTは、あなたに本音を無理やり言わせる場所じゃない。
「全部さらけ出せば楽になる」と煽ることも、「言えないのは甘えだ」と裁くことも、しない。
大事にしているのは、順番。
まず、立ち止まる。次に、自分の声を聴く。それから、小さく動き出す。RE:STARTで僕が作っているものは、全部この順番でできている。
動き出しは、小さくていい。
いきなり核心の本音を言うんじゃなく、「今日は先に帰るね」とひとつ断ってみる。小さな一言を、一個ずつ。それだけでも立派な、本音の練習になる。
正直に言うと、僕もいまだに、言葉を飲み込んでしまう日がある。偉そうに書いているけど、僕もまだ途中。だからあなたに「すぐ言えるようになるよ」なんて、軽い約束はしない。
それでも、これだけは言い切れる。無理に言わされて傷つくより、自分の中で整理してから、言う場所と言葉を選ぶほうが、ずっと健全だ。
あなたの本音は、誰かの「言っちゃいなよ」で雑に扱われていいものじゃない。
怖さの正体に、名前をつける
あなたが、ずっと言えずにいる本音は何ですか?
それを口にしたら、何が起きると思っていますか?
頭の中だけで終わらせず、その「起きそうなこと」まで、ちゃんと言葉にしてみてほしい。書き出してみると、本当に備えるべきものと、ただの思い込みが、少しずつ仕分けされていく。
怖さは、名前がつくと小さくなる。——正体の見えない影が、いちばん大きく見えるのと同じだ。
本音は、叫ぶ前に、まず聴くもの。
あなたの声を世界で最初に聴いていい人は、他の誰でもなく、あなただ。
急がなくていい。言える日は、今日じゃなくていい。ただ、自分の声を無視したまま終わらせることだけは、しないでほしい。
——あなたの本音は、消えていない。聴いてくれる日を、ちゃんとあなたの中で待っている。
あなたの本音を、安全な場所で言葉にする
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ひとりで見るのが怖い本音がある人は、初回相談を使ってほしい。
無理に言わせる場所じゃなく、一緒に、あなたの声を聴く時間にする場所だから。