あなたの番は、
いつも、
最後だ。
相手を優先する。場の空気を読む。自分の気持ちは、後で。——そうやって今日も、自分を列の最後に並ばせたんじゃないか。それを「優しさ」とか「大人」とか呼んで、納得してきたんじゃないか。
後回しが一回ならいい。誰だってある。
——でも、それが毎日、毎月、毎年と続いてきたなら、話は変わってくる。「後で」と言い続けたその「後」は、たぶん一度も来ていない。
刺さったなら、ごめん。でも責めてるんじゃない。僕がずっとそうだったから、言ってる。譲って、合わせて、自分の声を最後に回しているうちに——どれだけの「本当はこうしたかった」が、誰にも知られないまま消えていったんだろう。
気づかれない傷が、いちばん深い
その場では、平気なふりができてしまう。だから厄介だ。
笑って「いいよ、私は後で」と言ったあなたの内側で、
——後回しにされた自分は、ちゃんと傷ついている。声に出さないだけで、なかったことにはなっていない。
「また、自分の気持ちは選ばれなかった」
——心の奥は、たぶんそう受け取っている。それが一度や二度じゃないことも、あなた自身がいちばんわかっている。
他人に後回しにされたら、人はすぐ気づく。腹も立つし、悲しくもなる。
——でも、自分で自分を後回しにしている時だけは、なぜか気づかない。加害者と被害者が同じ人間だから、誰も止めてくれない。
だから、ずっと削れ続ける。血が出ない傷ほど、深いところまで進む。
嫌われたくない。迷惑をかけたくない
嫌われたくない。
迷惑をかけたくない。
相手を困らせたくない。
——自分の気持ちを口に出すのが、怖い。本音を言った瞬間に、空気が変わる気がする。
だから、飲み込む。「私はいい」で、その場をおさめる。
その怖さは、よくわかる。僕も長いあいだそうだった。
周りの目に縛られて、嫌われるくらいなら自分が黙ろう、と決め込んできた。本音を言って嫌われるより、黙って好かれている方が安全だと思ってた——今も、油断するとそっちへ戻りそうになる。だから、わかったような顔で書くつもりはない。僕もまだ途中だ。
ここで世間の当たり前に、一つだけ異議を唱えたい。「自分の気持ちを後回しにできる人=優しい人」というあの空気だ。本当にそうだろうか。自分を黙らせて差し出した優しさは、長く続かない。やがてどこかで、相手への小さな恨みに変わっていく。
飲み込み続けるほど、あなたは——自分が何を感じているのかさえ、わからなくなっていく。
いきなり大きく主張しなくていい
いきなり大きく主張しなくていい。長年の癖を、明日いきなり手放せるわけがない。順番を変えるのは、もっと地味なところからでいい。
まず、一度だけ立ち止まって、自分に聞く。
今日、本当は何が食べたいか。
——本当は、少し休みたいか。
今、誰といたいか。何を、したくないか。
答えはどんなに小さくていい。「コーヒーじゃなくて、紅茶がいい」くらいでいい。
大事なのは内容じゃなく、相手や状況より先に、自分の気持ちを一度聞いた——その順番だ。
そして、毎日ひとつだけ「今日は自分を先にした」を積み上げる。
——完璧じゃなくていい。できない日があってもいい。三日空いても、四日目にまた一つやればいいだけだ。
気づいた時には、後回しグセは少しずつゆるんでいる。力んで直すものじゃない。小さく自分を先にし続けていると、あるとき「あ、最近ちゃんと言えてる」と気づく——その順番でしか、人は変わっていかない。
自分勝手になれ、と言っているわけじゃない
誤解しないでほしい。RE:STARTは「自分勝手になれ」とも「我慢をやめて好き放題やれ」とも言っていない。
自分を最優先にして、周りを後回しにする——それはただ、後回しにされる側が入れ替わっただけだ。
大切にしたいのは、入れ替えじゃなくて、戻ること。
自分を列の最後に並ばせ続ける人生から、少しずつ、自分の声が聞こえる場所へ戻っていく。それだけだ。
目の前の人を大切にしながら、自分の気持ちも置き去りにしない。
どちらかを切り捨てる話じゃない。相手を立てる優しさと、自分を裏切らない誠実さは、本当はぶつからない。
その両立は、できる。きれいごとじゃなくて——自分を後回しにしない人ほど、相手にも無理のない優しさを返せるようになる。
今日、自分の気持ちを一つだけ優先するなら
今日、自分の気持ちをひとつだけ先にするなら、それは何だろう。
そして——本当は、何を後回しにしたくなかったんだろう。
うまく答えようとしなくていい。一言でいい。
——今日ひとつだけ、自分の気持ちを順番の先に置いてみる。たったそれだけのことが、後回しにしてきた自分との関係を、内側からほどき始める。
自分の気持ちを後回しにする癖は、
少しずつ、ほどいていける。
一気に変わろうとしなくていい。簡単に変わるとも言わない。ただ、小さく自分を先にする——その積み重ねが、置き去りにしてきた自分との関係を、ゆっくり戻していく。
——あなたの番は、まだ最後に回らなくていい。今日、ひとつだけ、自分を先にしよう。
「自分を先にする」を、小さく練習する
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どこで、誰に対して後回しにしているのか——その地図を、一緒に静かに描いていけます。