夜中の布団の中。部屋の電気はとっくに消えていて、スマホの光だけが、自分の顔を照らしている。
画面の向こうでは、同い年の誰かが「夢を叶えました」と笑っていて、その下には祝福のコメントが並んでいる。
数秒だけ眺めて、いいねも押さずに、そっとアプリを閉じた。閉じたのに、目は冴えたまま。
あの静けさ。天井を見ながら、「それに比べて、自分には何もない」と胸の奥がすっと冷えていく、焦りとも寂しさともつかない、あの感じ。覚えがあるなら、この記事はあなたのために書いた。
先に言っておく。夢がないことは、責められるようなことじゃない。恥でもないし、遅れでもない。むしろ、責めれば責めるほど、夢は遠ざかっていく。今日は、その仕組みの話と、夢より先に見るものの話をしたい。
夢を語る人の隣で、小さくなっていく
同級生が独立した。後輩が「やりたいことが見つかった」と言って会社を辞めた。SNSを開けば、通知のたびに誰かの新しい挑戦が流れてくる。
手帳に夢を書き出す人。朝活で未来を語る人。今年の抱負を、堂々と宣言する人。
世界中が前を向いているように見える日が、ある。そういう日に限って、自分だけが同じ場所で止まって見える。
それなのに自分は、何がしたいのか、わからない。
どこへ行きたいのかも、わからない。五年後どころか、来年の自分すら想像できない。
「将来の夢は?」と聞かれるたびに、その場しのぎの答えを並べて、笑ってごまかす。家に帰ってから、少しだけ自己嫌悪する。
「自分だけ、空っぽな気がする」——夜になると、その感覚は昼間の倍になって膨らんでいく。
焦るのは当然。苦しいのも当然。ただ、僕はこう見ている。その苦しさの正体は、夢がないことそのものじゃない。夢がない自分を、毎晩責め続けていること。
「夢を持て」という常識を、一度疑っていい
夢は何ですか。目標は何ですか。将来、どうなりたいですか。大人たちは悪気なく、それを聞いてくる。
卒業文集から、就活の面接、大人になってからの飲み会まで、この質問は形を変えて一生ついてくる。
そしてこの社会は、夢をすらすら語れる人を「ちゃんとした人」、語れない人を「もったいない人」として扱いすぎている。
でも僕は、夢がない人より、その常識のほうを疑っている。
夢を持つことは、義務じゃない。夢がないことは、欠陥でもない。語れない時期の沈黙は、怠けでもない。
正直に言う。あなたは夢が「ない」んじゃない。
親の期待、先生の評価、世間の正解。「何が好きか」より先に「何が正解か」を考えるクセがついて、自分の感覚に蓋をしてきた。それだけのこと。
責めてるんじゃない。むしろ逆。僕自身が長いことそうだったから、言っている。
焦って、感覚に蓋をしたまま、誰かに褒められそうな夢を急いででっち上げても、
その夢はあなたを一ミリも動かさない。借り物の夢は、人生の燃料にならない。増えるのは「夢があるのに動けない自分」という、新しい責め道具だけ。
大きな夢より先に、小さな本音
偉そうに聞こえていたら嫌だから、ここから少し、僕自身の話をする。
僕も長いあいだ、夢の欄が空白のままの人間だった。
周りの目ばかり気にして、「ちゃんとしなきゃ」「変に思われたくない」「失敗したらどうしよう」だけで毎日を埋めて、
夜は動画とSNSに時間を溶かして、何も残らないまま眠る。その繰り返しで、季節だけが変わっていく。
夢どころか、自分が何を好きで、何が嫌で、何に傷ついているのかさえ、わからなくなっていた。
それでも人前では、それっぽい目標を語ってみせていた。空っぽだと、バレないように。
だから、これだけは断言できる。夢が見つからないこの時期に必要なのは、夢探しじゃない。夢より先に、やることがある。
何が嫌か。何をやめたいか。何を手放したいか。どの予定の前日は、気が重いか。どんな時間なら、ほんの少しだけ息がしやすいか。
拾うのは、その程度の小さな感覚でいい。というより、そこにしか手がかりはない。大きな夢は、いつもこの小ささから始まっている。
夢は、机の上で「設定」するものじゃない。探し回って見つけるものでもない。
小さな本音を拾い続けた人の中に——ある日気づいたら、勝手に育っているもの。
夢を作らせる前に、立ち止まる時間を
だからRE:STARTは、
夢や目標を、無理に作らせない。
立派な目標を掲げさせて、期限を切って、とにかく走らせる。それなら誰にでもできる。
でも、借り物の夢で走って苦しくなった人を、僕は何人も見てきた。そういう人を増やすために、この場所を作ったわけじゃない。
最初に渡したいのは、立派な夢じゃなくて、立ち止まる時間。押し殺してきた本音と、鈍らせてきた感覚を先に取り戻せば、やりたいことは、催促しなくても、その先で勝手に顔を出してくる。
順番が、すべて。
——本音 → 感覚 → 望み → やりたいこと。
今夜、自分にひとつだけ聞いてみる
大きな夢も、立派な目標も、いらない。
今のあなたが、いちばん嫌なことは何?
何をしている時なら、ほんの少しだけ、心が動く?
出てきた答えがどんなに小さくても、くだらなく思えても、笑わずに、スマホのメモでも紙の端でもいいから、一行だけ書いてみてほしい。誰にも見せなくていい。
立ち止まる。自分の声を聴く。一行だけ、動いてみる。夢より先にやる仕事は、たったこれだけ。そしてこの小さな一行が、何年分の「夢を探さなきゃ」という焦りより、よっぽど人生を動かす。
夢や目標がない自分を、
責めなくていい。
僕もまだ途中。胸を張って夢を語れる日ばかりじゃないし、今でも、自分の声を聞き逃したまま一日が終わることがある。
それでも、小さな本音を拾い始めた日から、人生は確かに動き出した——あなたの夢も、急がなくていいから、あなたのペースで、その先にゆっくり育てていけばいい。
夢の前に、小さな本音から
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